月曜日の夜、ふと Anthropic の公式サイトを開いて、Code with Claude Tokyo のライブ配信登録ページを眺めていました。「Tokyo · June 10」と画面に出ています。もう1週間後でした。
対面の申込は早々に締め切られていて、抽選のはずです。私の手元にあるのは、ライブ配信の登録だけ。それでも、Anthropic の開発者カンファレンスが東京で開催されて、日本時間でそのまま見られる機会というのは、年に何度もありません。
Anthropic API を実プロジェクトで使っている個人開発者として、これは見逃したくないイベントです。
本記事の確認日:2026年6月3日 / イベント開催:2026年6月10日(火)Code with Claude Tokyo、6月11日(水)Code with Claude: Extended Tokyo / 確認情報:Anthropic 公式 Code with Claude ページ(claude.com/code-with-claude)、SF(5/6)・London(5/19)に関する各種報道、Anthropic Tokyo 関連の発表。実機検証ではなく、公式発表と二次情報をもとにした予習メモです。
Code with Claude Tokyo は、どんなイベントか
Code with Claude は、Anthropic が開催する開発者向けカンファレンスです。2025年に初めて開催されたときはサンフランシスコだけで、規模もこぢんまりとしたものでした。2026年は3都市ツアーに拡大しています。San Francisco を5月6日、London を5月19日、そして Tokyo を6月10日に開催する流れです。
Tokyo は、Anthropic にとって APAC(アジア太平洋)初の Code with Claude 開催地になります。Anthropic は SF を本拠地としていて、欧州への進出は London の事務所を中心に進めてきましたが、APAC でこの規模のイベントを構えるのは今回が初めてです。アジアの開発者コミュニティに対する Anthropic の姿勢が、はっきり変わったと読めるタイミングです。
イベントの形式は、対面とライブ配信の2本立てです。対面は会場の都合で人数制限があり、申込は既に締め切られていて、抽選で決まっているはずです。一方でライブ配信は無料で、登録すれば誰でも見られます。Tokyo 開催ということは、日本時間でそのまま視聴できる時間帯になります。アメリカ西海岸時間で SF を見ようとすると深夜になりますが、Tokyo は朝から夜までずっと日本時間で動いてくれる、というだけでも見やすさが違います。
そして、6月10日の本会場の翌日、6月11日(水)に Code with Claude: Extended Tokyo という別イベントが用意されています。これは個人開発者と早期創業者(early-stage founder)向けの、より小さな規模のセッションです。ファウンダーストーリー、ビルダーディープダイブ、Anthropic の Applied AI チームによる「ラップトップを開いて手を動かすワークショップ」が予定されています。本会場と Extended の両方を行き来できる人は、かなり充実した2日間になりそうです。
SF(5/6)で発表されたこと
Tokyo を予習するなら、まず1か月前の SF で何が発表されたかを押さえる必要があります。Tokyo は SF と完全に同じ内容ではないはずですが、骨格は共有しているはずです。
SF で大きく発表されたものを、自分が刺さった順に書きます。
ひとつ目は、Managed Agents の public beta です。Multiagent Orchestration と Outcomes という2つの仕組みが public beta に移行しました。Managed Agents は、複数のエージェントを協調させて1つの仕事を進めるための、Anthropic 側がインフラを面倒見てくれる仕組みです。これまでエージェント間の協調は、開発者が自前で組まないといけませんでした。それを Anthropic 側で抱えてくれる、というのが大きな違いです。
ふたつ目は、Claude Code の機能拡張です。Project Purge という新しいコマンド(claude project purge)が追加されました。プロジェクトの状態と履歴を一括で消す機能です。Claude Code を長く使っていると、過去のセッション履歴や中間状態が増えていって、コンテキストが汚れることがあります。Project Purge はそれをきれいに洗い流せる、現実的に便利な機能だと感じています。地味なアップデートに見えますが、毎日 Claude Code を使う立場からすると、こういう機能の追加が一番嬉しい。
みっつ目は、パートナーシップの発表です。GitHub、Vercel、Datadog といった、開発者が日常的に触れるサービスとの連携が発表されました。GitHub との連携は、Claude Code が PR を作成して、レビューを依頼するところまで自動化できる方向に進んでいます。Vercel との連携は、デプロイの自動化に踏み込んでいます。Datadog は監視まわり。これらが揃うと、AI エージェントが「コードを書く」だけでなく「デプロイして監視まで見届ける」ところまで責任を持てるようになります。
SF のスピーカーには、Ami Vora(Anthropic の CPO)、Boris Cherny(Head of Claude Code)、Angela Jiang(Claude API と SDK の Product Lead)といった、まさにこれらの製品を作っている当事者が並んでいました。Tokyo にも、同じ顔ぶれか、それに近い体制で来るはずです。
ここまでが SF の整理です。1か月前の発表なので、もう情報としては各所で消化されていますが、Tokyo を見る前にこれをざっと頭に入れておくと、当日のセッションが何の延長線上にあるかを掴みやすくなります。
London(5/19)で深まったであろう文脈
London のセッションについては、私が直接確認できた情報は限定的です。なので、ここからは推測込みで書きます。
London は、SF の延長線上にあるのは間違いないと思います。Managed Agents、Claude Code、パートナー連携の3軸はそのまま引き継がれているはずです。一方で、London で深まったであろうテーマがいくつかあります。
ひとつは、データ主権とコンプライアンスの話です。ヨーロッパは GDPR をはじめとして、データの取り扱いに対する規制が厳しい地域です。Anthropic が London でカンファレンスを構える以上、エンタープライズが Claude を導入するときの規制対応の話題は、SF より厚めに扱われたはずです。
もうひとつは、エンタープライズの導入事例です。SF はスタートアップ・開発者中心のトーンが強いのですが、London はヨーロッパの大企業が Anthropic に何を期待しているかが見える場になったと思っています。Anthropic 自身もエンタープライズ展開を強化しているフェーズで、London はその布石でもあるはずです。
このあたりは、Tokyo にも引き継がれる可能性があります。Tokyo の事情は London とは違いますが、エンタープライズとの距離感、規制への目線、地域の開発者コミュニティとの対話、というテーマはどの都市でも共通しています。
Tokyo で予想される展開
ここからは、Tokyo に向けて自分が予想していることを書きます。あくまで予想なので、外れる前提で読んでください。
まず、日本市場・APAC 向けの内容が前面に出てくるはずです。Anthropic は2026年4月に NEC とのエンタープライズパートナーシップを発表していて、日本における大企業向けの展開を本格化させています。Tokyo の場ではこのパートナーシップがどう発展しているか、追加の発表があってもおかしくありません。日本のエンタープライズ AI 市場は、米国とはかなり違う構造です。大企業の意思決定が長く、既存の SIer との関係が強く、パートナーシップ経由の導入が中心になります。Anthropic がこの構造に合わせて、どんな日本特有の打ち手を出してくるかは、Tokyo を見る上で一番気になる部分です。
ふたつ目に予想しているのは、日本語環境での Claude 活用の話です。Anthropic API を日本語で叩いてみると、トークン消費の独特なクセや、日本語特有の出力の揺れに気づきます。日本人の開発者が Claude を使うときに直面する課題に、Anthropic 側がどう向き合っているか。Tokyo で扱われるなら、それは APAC 全体の日本語圏・中国語圏・韓国語圏の開発者にとっても参考になるはずです。
みっつ目に予想しているのは、Extended Tokyo を活かした個人開発者向けのメッセージです。本会場が大企業・スタートアップ向けのキーノートやセッション中心になるとしたら、翌日の Extended Tokyo は完全に個人開発者と早期創業者向けに振られます。Anthropic 自身が「Code with Claude is where you hear what’s new. Extended is where you see it in the wild.」と表現しているとおりです。
Extended Tokyo では、個人で Claude を使って事業を立ち上げた人たちのファウンダーストーリーや、Applied AI チームによるハンズオンが用意されます。「CS の学位がなくても、エンジニアリングチームがなくても、ソフトウェアは出荷できる」というメッセージが、ここで前面に出てくるはずです。私のように WordPress プラグインの開発を一人で進めているような立場の人にとって、これはまさに見たいセッションです。
Tokyo の場と Extended の場、両方を続けて見ることで、Anthropic が「大きな組織向けの戦略」と「個人開発者向けのメッセージ」をどう両立させているか、立体的に見えるはずです。
個人開発者として注目したいこと
ここからは、Tokyo を見るときに自分が特に注目しているテーマを書きます。Anthropic API を実プロジェクトで使っているプラグイン開発者の立場から、いま気になっていることに絞ります。
最初に気になっているのは、Managed Agents が個人レベルで実用的に使えるかどうかです。SF の発表では、エンタープライズ向けのオーケストレーションが中心に紹介されていました。料金面でも、複数エージェントを並列で動かすと、API のコストはそれなりに積み上がるはずです。個人開発者が手の届く範囲で Managed Agents を試せるのか、料金プランや無料枠はあるのか。Tokyo で具体的な数字や事例が出ることを期待しています。
ふたつ目は、Claude Code の運用面の改善です。Project Purge のような小さな機能追加も含めて、Claude Code は半年でかなり変わってきました。以前、自作の WordPress テーマで AI コーディングのツケが回ってきた話を 半年前に AI と一緒に書いたコードを、自分でメンテできなくなった話に書きましたが、あのときの教訓は「動いた瞬間を完成にしない」「仕様書を残す」「設計の主導権を AI に渡さない」というところに収束しました。Claude Code の今後のアップデートが、こうした個人開発者の悩みにどこまで応えてくれるか、Boris Cherny さんのセッションがあれば聞いてみたい話です。
みっつ目は、MCP(Model Context Protocol)の最新事情です。MCP は2024年11月に Anthropic が発表したオープン規格で、AI クライアントが外部ツールと標準化された方法で通信する仕組みです。2025年から2026年にかけて、業界全体に広がりました。WordPress に MCP サーバーを実装するプラグインも、2026年に入って20を超える数が登場しています。WordPress 7.0「Armstrong」のリリースに合わせて、公式の MCP Adapter も Core 統合に向けた動きが進んでいるようです。WordPress プラグインを開発している立場として、自作プラグインに MCP サーバーを組み込む流れがどうなるか、Tokyo で何か新しい話が出るかは、特に注目しています。
WordPress と AI の接続については、WordPress 7.0 の WP AI Client を読み解いた WordPress 7.0 の WP AI Client を実装目線で読み解いた話でも触れています。Anthropic が WordPress のような既存のエコシステムをどう取り込もうとしているか、Tokyo の場で何か追加のメッセージがあれば、自分のプロダクトの方針にも直結します。
よっつ目は、エンタープライズ向けのメッセージとは別に、個人開発者・フリーランス向けに Anthropic がどんな顔を見せるかです。NEC のような大企業との提携は、日本における AI 導入の象徴的なニュースですが、個人開発者にとって直接の影響は限定的です。私のように WordPress プラグインを一人で開発して、WordPress.org に公開して、Anthropic API を組み込んだプロダクト(Rapls AI Chatbot シリーズ)を運営している立場では、Extended Tokyo のほうが実利のある情報源になりそうです。
当日どう参加するか
実際に当日どう動くつもりか、書いておきます。同じように仕事の合間にライブ配信を見たい個人開発者の参考になれば。
まず、ライブ配信の登録です。Anthropic の公式サイト(claude.com/code-with-claude)から、ライブ配信の登録ページに進めます。メールアドレスを登録すると、配信前に確認メールが届く流れです。配信プラットフォームの詳細は、開催が近づくと案内されるはずなので、メールを見落とさないようにフラグを立てておきました。
タイムゾーンは、Tokyo 開催なので日本時間そのままで進みます。深夜帯を気にしなくていいのは大きい。本会場のセッションは、朝の Check-in & Breakfast から始まって、Product Keynote、Breakouts と Workshops、Lunch、午後の Breakouts と Workshops、Demos と Office Hours(10:30〜20:00)、Evening Reception で締める流れになっています。日本時間の朝から夜まで、ずっと何かしらが動いている1日です。
仕事の合間に全セッションを追いきるのは、現実的に難しいと思っています。なので、サブモニターでライブ配信を流しっぱなしにして、気になるテーマが来たら仕事を止めて聞く、という見方になりそうです。Keynote と、Managed Agents・Claude Code・MCP に関連するセッションは優先して見たい。それ以外は、後で録画(公開されるはず)で追う前提です。
メモは、Notion か Obsidian にざっと書きながら見ようと思っています。リアルタイムでメモを取っておくと、後で記事にまとめるときに格段に楽です。逆に「あとで書こう」と思って何もメモしないと、その日のうちに細部を忘れます。これは経験則です。
翌日の Extended Tokyo もチェックする予定です。個人開発者向けに振られているので、本会場とは違うトーンの話が聞けるはずです。両日のメモが揃ったら、別記事で振り返るつもりです。
できたら全セッション見たい、という気持ちは正直あります。ただ、仕事が完全に止まるわけではないので、優先セッションを事前に決めておく方が現実的です。Anthropic 公式の Agenda が公開されたら、もう一度組み直します。
次の自分に渡すメモ
個人開発者は、情報の入り口を絞らないと埋もれます。X のタイムラインや RSS をいくら追っても、本当に必要な技術情報は流れていく一方です。
Code with Claude Tokyo のような公式イベントは、年に数回しかない貴重な「一次情報の発表場所」です。録画を後から見るより、ライブで見て当日に考えるほうが、頭に残りやすい。仕事の合間に流しっぱなしでもいい、優先セッションだけは集中して聞く、それくらいの距離感で接するつもりです。
6月10日と11日、できたら両方とも見ます。終わったら、また記事にまとめます。Anthropic が次の半年でどこに向かうか、見える1日になるはずだと思ってます。
本記事の確認日は2026年6月3日です。記事中で言及した AI コーディングの実体験については 半年前に AI と一緒に書いたコードを、自分でメンテできなくなった話を、WordPress 7.0 における Anthropic 関連の動きについては WordPress 7.0 の WP AI Client を実装目線で読み解いた話を合わせてご覧ください。AI コーディング・Anthropic API・WordPress プラグイン開発の実体験は、当サイトの Web Development カテゴリにまとめています。







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