Apple Silicon(M1 / M2 / M3 / M4)Macは、速い・静か・省電力で最高のマシンです。しかし、「コマンドでツールを入れたい」「開発や検証用のCLIを揃えたい」「環境を一括で更新したい」となった瞬間、macOS標準だけでは物足りなくなります。
wgetでファイルをダウンロードしたいffmpegで動画を変換したいnode/pythonをプロジェクト別に管理したいgitやopenssl周りの挙動を把握したい- そして何より、インストール・更新・削除を「まとめて管理」したい
ここで登場するのが Homebrew です。HomebrewはmacOS向けのパッケージマネージャで、ソフトやCLIツールをコマンド一発で導入・更新・削除できます。
本記事では「初めて入れる人が失敗しない」ことを最優先に、Xcode Command Line Tools(CLT)からPATH設定、運用、よくあるトラブル、移行・復旧までを徹底解説します。記事中のコマンドは、原則そのままコピペOKです。
📌 この記事でわかること
- Homebrewとは何か、なぜ必要なのか
- Xcode Command Line Toolsの役割とインストール方法
- Apple Silicon Macへの正しいHomebrew導入手順
- 日々の運用で使うコマンドとおすすめパッケージ
- トラブル発生時の対処法と環境移行のコツ
1. Homebrewとは?パッケージマネージャの基本
Homebrewは、macOSに標準搭載されていないUNIXツールやアプリを、コマンドで管理するための仕組みです。「macOSに足りないものを補う」という意味で、The missing package manager for macOSというキャッチフレーズが付いています。
Homebrewでできること
| 操作 | コマンド例 | 説明 |
|---|---|---|
| CLIツールの導入 | brew install wget |
コマンド一発でインストール |
| GUIアプリの導入 | brew install --cask visual-studio-code |
VS CodeやChromeも管理可能 |
| 一括更新 | brew update && brew upgrade |
導入済みツールをまとめて最新化 |
| 削除 | brew uninstall wget |
クリーンにアンインストール |
| 環境の再現 | brew bundle |
Brewfileで別マシンに移行 |
知っておきたい用語:formula と cask
Homebrewには、インストール対象の種類が大きく分けて2つあります。
- formula(フォーミュラ):主にCLIツール(例:
git,wget,ffmpeg) - cask(キャスク):主にGUIアプリ(例:Google Chrome, VS Code, Slack)
formulaは「brew install 〇〇」、caskは「brew install –cask 〇〇」でインストールします。この違いを覚えておくと、迷わず使えるようになります。
2. Xcode Command Line Tools(CLT)とは?なぜ必要?
Homebrewはソフトを「ビルド済み(ボトル)」の状態で入れてくれることが多く、基本的にはインストールが高速です。しかし、状況によってはソースコードからビルド(コンパイル)する必要があります。
その時に必要になるのがコンパイラ(clang)やmake等の開発ツールです。これらを提供するのがXcode Command Line Tools(CLT)です。
CLTは「Xcode」というApple純正の開発環境の一部ですが、Xcode本体をインストールする必要はありません。CLTだけで十分です。Xcode本体は10GB以上ありますが、CLTは数GB程度で済みます。
CLTをインストールする
ターミナルを開いて、以下のコマンドを実行します。
xcode-select --install
コマンドを実行すると、GUIダイアログが表示されてインストールが始まります。ネットワーク環境によりますが、数分〜10分程度で完了します。
CLTがインストールされたか確認する
xcode-select -p
clang --version
xcode-select -p が「/Library/Developer/CommandLineTools」のようなパスを返せばOKです。clang --version でコンパイラのバージョンも確認できます。
3. インストール前の準備チェック(Apple Siliconの注意点)
Apple SiliconではHomebrewの標準インストール先が/opt/homebrewになります。Intel Mac(やRosetta経由)でよく見かける/usr/localとは異なるため、ここが混在すると問題が起きやすくなります。
3-1. macOSのシェルを確認する(zshが標準)
echo $SHELL
/bin/zshと表示されれば標準的な環境です。bashでも問題ありませんが、設定ファイル名が異なります(後述)。
3-2. 古いbrewが混ざっていないか確認
過去にIntel Macから移行してきた場合や、Rosetta経由で古いbrewを使ったことがある場合は、以下で確認します。
which -a brew
| 環境 | brewのパス |
|---|---|
| Apple Silicon(ネイティブ) | /opt/homebrew/bin/brew |
| Intel / Rosetta | /usr/local/bin/brew |
両方が表示される場合は、Apple Silicon側を優先するPATH設定が必要です(セクション5で解説)。
4. Homebrewのインストール手順
Homebrew公式のインストーラを使います。ターミナルで以下のコマンドを実行してください。
/bin/bash -c "$(curl -fsSL https://raw.githubusercontent.com/Homebrew/install/HEAD/install.sh)"
途中で管理者パスワードの入力を求められることがあります(初回のみ)。画面の指示に従って進めてください。
インストールが完了すると、「Next steps」としてPATHを通すためのコマンドが表示されます。これを必ず実行してください(次のセクションで詳しく解説します)。
5. PATH設定(brew: command not found対策)
インストール直後に最も多いエラーがこれです。
brew: command not found
これはPATHが通っていないだけのことがほとんどです。落ち着いて以下の設定を行いましょう。
5-1. zshの場合(macOS標準)
echo 'eval "$(/opt/homebrew/bin/brew shellenv)"' >> ~/.zprofile
eval "$(/opt/homebrew/bin/brew shellenv)"
1行目は設定ファイルへの追記、2行目は現在のセッションへの即時反映です。
5-2. bashの場合
echo 'eval "$(/opt/homebrew/bin/brew shellenv)"' >> ~/.bash_profile
eval "$(/opt/homebrew/bin/brew shellenv)"
5-3. 設定が反映されたか確認
which brew
brew --version
/opt/homebrew/bin/brewと表示され、バージョン情報が出れば成功です。
6. brewの基本操作(入れる・探す・更新する・消す)
Homebrewの基本操作を覚えましょう。これだけ知っていれば日常的な使用には困りません。
パッケージを探す
brew search wget
名前の一部でも検索できます。公式サイト(https://formulae.brew.sh/)でも検索可能です。
CLIツールをインストール(formula)
brew install wget
GUIアプリをインストール(cask)
brew install --cask visual-studio-code
パッケージの情報を確認
brew info wget
バージョン、依存関係、インストール場所などが確認できます。
インストール済みパッケージの一覧
brew list # formulaの一覧
brew list --cask # caskの一覧
パッケージを削除
brew uninstall wget
brew uninstall --cask visual-studio-code
7. よく使うコマンド集
日々の運用で使うコマンドをまとめました。
更新の基本セット(定期的に実行)
brew update # Homebrew自体と定義ファイルを更新
brew upgrade # インストール済みパッケージを最新版に更新
brew cleanup # 古いバージョンのファイルを削除して容量を節約
これら3つをまとめて実行するなら、以下のようにします。
brew update && brew upgrade && brew cleanup
更新があるパッケージを確認
brew outdated
問題診断(困ったらまずこれ)
brew doctor
環境に問題がないかチェックし、修正方法も提案してくれます。非常に親切なコマンドです。
Homebrewの場所を確認
brew --prefix # Homebrewのルート(/opt/homebrew)
brew --cellar # パッケージの保存場所
brew --repository # Homebrewのリポジトリ
特定のパッケージを固定(更新したくない場合)
brew pin <formula名> # 更新を停止
brew unpin <formula名> # 更新を再開
設定情報の確認(トラブル時に便利)
brew config
8. おすすめパッケージ(目的別スターターセット)
「最初に何を入れればいいの?」という疑問に答えます。用途に合わせて必要なものだけ入れてください。
8-1. まずはこれ(基本ユーティリティ)
brew install git wget curl tree jq ripgrep fd
| パッケージ | 説明 |
|---|---|
git |
バージョン管理(macOS標準より新しいバージョン) |
wget / curl |
ファイルのダウンロード |
tree |
ディレクトリ構造を視覚的に表示 |
jq |
JSONの整形・抽出(API検証に最適) |
ripgrep(rg) |
超高速なgrep(ファイル内検索) |
fd |
findより使いやすい高速ファイル検索 |
8-2. 開発の土台(ビルド・言語系)
brew install cmake pkg-config openssl@3
Node.js
brew install node
node -v
npm -v
Python
brew install python
python3 --version
pip3 --version
pipx(Python CLIツールを独立環境で管理)
brew install pipx
pipx ensurepath
8-3. ネットワーク・サーバー検証
brew install nmap htop tmux
htop:プロセス監視(見やすいtop代替)tmux:ターミナル分割&セッション維持nmap:ネットワーク・ポート確認
8-4. 画像・動画・PDF処理
brew install ffmpeg imagemagick poppler
ffmpeg:動画・音声変換の定番imagemagick:画像の変換・加工poppler:PDF処理(pdftotextなど)
8-5. 品質・セキュリティ系
brew install shellcheck git-delta
shellcheck:シェルスクリプトの静的解析delta:git diffを見やすく表示
8-6. GUIアプリ(cask)
brew install --cask google-chrome visual-studio-code iterm2
Homebrewは便利すぎて、つい色々インストールしがちです。以下の方針がおすすめです。
- まずは「必須の基本道具」だけ入れる
- 必要になったらその都度追加する
- Brewfileで「今の正解」を記録しておく(移行時に便利)
9. トラブルシューティング
よくある問題と解決方法をまとめました。
9-1. brew: command not found
原因:PATH設定ができていない
解決:セクション5のbrew shellenvを設定してください。
which brew # パスを確認
echo $PATH # PATHに/opt/homebrew/binが含まれているか確認
9-2. /usr/localのbrewが優先されてしまう(混線)
which -a brewで複数出る場合、.zprofileに/opt/homebrew/binを優先する設定があるか確認します。
cat ~/.zprofile
9-3. CLTが無い・壊れている(ビルドエラー)
xcode-select -p # パスを確認
xcode-select --install # 再インストール
sudo xcode-select --reset # リセット(パスがおかしい場合)
9-4. brew doctorで警告が大量に出る
「推奨」と「致命的」が混在しています。まずはメッセージをよく読み、致命的なものから対処してください。
9-5. Permission denied(権限エラー)
Apple Siliconで/opt/homebrewを使っている場合、通常sudoは不要です。権限が崩れている場合はbrew doctorの指示に従ってください。
chmod -R 777のような大雑把な権限変更は絶対に避けてください。セキュリティリスクが高まります。9-6. 企業ネットワーク・プロキシ環境で失敗する
GitHubへのアクセスや証明書(CA)の問題が考えられます。必要に応じてHTTP_PROXY/HTTPS_PROXY環境変数を設定してください。
10. 移行・復旧(Brewfileで環境を再現)
Homebrewの真価は環境の管理・再現性にあります。Brewfileを使えば、新しいMacへの移行が驚くほど簡単になります。
10-1. 新しいMacに移行する手順
Step 1:旧MacでBrewfileを書き出す
brew bundle dump --file=~/Brewfile --describe --force
--describe:コメント付きで出力(後で見返しやすい)--force:既存ファイルを上書き
Step 2:Brewfileを新Macに転送
iCloud Drive、Git、USBなど、お好みの方法で転送してください。dotfiles管理している人はGitリポジトリに含めるのが定番です。
Step 3:新MacでCLT → Homebrew → Bundleの順にセットアップ
# CLTをインストール
xcode-select --install
# Homebrewをインストール
/bin/bash -c "$(curl -fsSL https://raw.githubusercontent.com/Homebrew/install/HEAD/install.sh)"
# PATHを設定
echo 'eval "$(/opt/homebrew/bin/brew shellenv)"' >> ~/.zprofile
eval "$(/opt/homebrew/bin/brew shellenv)"
# Brewfileから一括インストール
brew bundle --file=~/Brewfile
これで旧Macとほぼ同じ環境が再現できます。
10-2. 移行時のチェックリスト
Homebrew以外にも、以下を準備しておくと完璧です。
- Brewfile(必須)
.zprofile/.bash_profile(シェル設定).gitconfig(Gitの設定)~/.ssh(SSH鍵)※取り扱い注意- iTerm2等のプロファイル
- VSCode settings.json
10-3. Homebrewが壊れた時の復旧手順
まず診断
brew doctor
brew config
updateがエラーになる場合
brew update --debug --verbose
CLTが原因っぽい場合
sudo xcode-select --reset
xcode-select --install
最終手段:Homebrewを入れ直す
Brewfileがあれば、入れ直しは怖くありません。
# 1. Brewfileを書き出す(できるなら)
brew bundle dump --file=~/Brewfile --describe --force
# 2. アンインストール
/bin/bash -c "$(curl -fsSL https://raw.githubusercontent.com/Homebrew/install/HEAD/uninstall.sh)"
# 3. 再インストール
/bin/bash -c "$(curl -fsSL https://raw.githubusercontent.com/Homebrew/install/HEAD/install.sh)"
# 4. PATH設定
echo 'eval "$(/opt/homebrew/bin/brew shellenv)"' >> ~/.zprofile
eval "$(/opt/homebrew/bin/brew shellenv)"
# 5. Bundleで復元
brew bundle --file=~/Brewfile
10-4. Intel時代のbrew(/usr/local)を整理したい
which -a brewでどのbrewが見えているか確認- Apple Silicon側(
/opt/homebrew)を優先する設定を確認 - Intel側が不要なら削除、必要なら明確に分離する
ポイント:無理に同居させず、「使う方を明確に分ける」だけで事故が減ります。
11. FAQ(よくある質問)
- Q1. Homebrewは必須?
- 必須ではありません。ただし、CLIツールや開発環境を整えるなら最短ルートです。
- Q2. Apple Siliconは必ず/opt/homebrew?
- はい、それが標準です。ここを外すと権限や混線で面倒になりがちです。
- Q3. Xcode本体を入れる必要はある?
- 多くの場合不要です。CLTだけで足ります。iOS/macOSアプリ開発をするなら必要です。
- Q4. CLTはどれくらい容量を使う?
- 環境により変動しますが、数GB程度を見込んでおきましょう。
- Q5. brewの更新はどれくらいの頻度がいい?
- 週1〜2回で十分です。毎日やっても問題ありません。
- Q6. brew cleanupは毎回やっていい?
- はい、問題ありません。ディスクに余裕があるならたまにでもOKです。
- Q7. brew doctorで警告が大量に出て不安
- 「推奨」も含まれています。致命的なものから順に読んで対処してください。
- Q8. sudoを頻繁に求められるのは正常?
- 初回セットアップ以外で頻繁に求められる場合は、権限やインストール先を確認してください。
- Q9. caskとformulaの違いがわからない
- formulaはCLI、caskはGUIアプリが多い、と覚えてOKです。
- Q10. brew install nodeとnvmはどっちがいい?
- 手軽さはbrew、プロジェクト別のバージョン切替はnvmが便利です。目的次第で選んでください。
- Q11. Pythonはbrewで入れていい?
- はい、問題ありません。システムPythonと混ぜないように意識すると事故が減ります。
- Q12. Homebrewのanalyticsが気になる
brew analytics offでオフにできます。- Q13. 企業ネットワークでインストールできない
- GitHubアクセスや証明書、プロキシ設定が原因のことが多いです。ネットワーク管理者に確認してください。
- Q14. Brewfileって何?
- Homebrewの導入状況を記録し、別環境で再現できるファイルです。
brew bundle dumpで作成します。 - Q15. Brewfileにcaskも含まれる?
- はい、含まれます。formulaもcaskもまとめて管理できます。
12. まとめ
Apple Silicon MacでHomebrewを使いこなすポイントを整理します。
🔑 覚えておくべきポイント
- Apple Siliconは
/opt/homebrewが標準 - 導入順はCLT → Homebrew → PATH設定
- 日々の運用は
update → upgrade → cleanup - 困ったら
brew doctor - Brewfile(brew bundle)で移行・復旧が圧倒的にラク
Homebrewは「入れた瞬間便利」ですが、真価は環境の管理・再現性にあります。この記事を参考に、あなたのMac環境を「育てていく」感覚で運用してみてください。


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