claude-memを「なんとなく便利」で終わらせていませんか?
インストールして、観測が溜まって、たまに検索する——それだけでも十分便利です。でも、このツールの本当のポテンシャルは、そんなものではありません。
なぜclaude-memはGitHubで11,000スター超を獲得したのか。なぜ24時間で949スターという異常な速度で広まったのか。
その理由は、アーキテクチャの革新性と運用で差がつく設計思想にあります。
この記事では、claude-memの内部構造から運用ノウハウ、そしてツール実行回数を20倍に拡張するEndless Mode(Beta)まで、上級者が知るべきすべてを解説します。
- この記事でわかること
- 想定読者
- 【重要】先に押さえるべき注意点
- 革新の核心:「Hook駆動の外付け」アーキテクチャ
- 設計思想:3つの「ない」
- データ設計:なぜSQLite + FTS5 + Chromaなのか
- progressive disclosure:LLMの弱点を逆手に取る
- settings.json:運用の「背骨」を設計する
- 運用で差がつく4つの「型」
- バックアップとメンテナンス戦略
- Endless Mode(Beta):20倍の可能性と代償
- 「1M context時代」にメモリが必要な理由
- FAQ:上級者の疑問に答える
- チーム導入向け:運用ポリシーテンプレート
- まとめ:claude-memを「武器」にする
- 参考リンク
- 注意事項
この記事でわかること
- なぜその設計になっているのか——Hook駆動・非侵襲設計の真意
- どこがボトルネックになりやすいのか——観測の質と検索性能
- どう運用設計すれば資産化できるのか——プロの「型」
- Endless Mode(Beta)をどう見極めるか——20倍の可能性とリスク
想定読者
- Claude Codeを日常的に使っていて、メモリ運用を詰めたい人
- 仕事で使うので、プライバシー/ログ管理/バックアップが気になる人
- チーム導入や長期案件を見据えている人
- 「50回の壁」を構造から突破したい人
【重要】先に押さえるべき注意点
ライセンス(AGPL-3.0)
claude-memはAGPL-3.0ライセンスです。社内利用・クライアント案件・改変・再配布の可能性がある場合、導入前に必ず確認してください。ネットワーク経由でサービス提供する場合は、ソースコード公開義務が発生します。
なお、ragtime/ディレクトリはPolyForm Noncommercial License 1.0.0で別途ライセンスされています。商用利用時は特に注意が必要です。
セキュリティ
観測ログは便利ですが、流出すれば設計や内部事情が丸見えになります。以下を整備してから本格運用してください。
- privateタグの運用ルール
- データ保存先(端末暗号化/アクセス制御)
- バックアップの取り扱い
- 共有範囲の明確化
革新の核心:「Hook駆動の外付け」アーキテクチャ
claude-memの最大の革新は、その設計思想にあります。
Claude Codeを「改造」しない。外側から「観測」して価値を足す。
Claude Codeは基本的にクローズドなバイナリです。内部を変更することは難しい。そこでclaude-memは、Claude Codeが提供するライフサイクルHookを利用します。
動作の流れ
- Hookでイベントを拾う(セッション開始、プロンプト送信、ツール実行後、停止、終了)
- イベントを「観測材料」としてキューへ(軽量・非ブロッキング)
- Workerが非同期で観測を生成(Claude Agent SDKで約500トークンに圧縮)
- SQLite + Chroma Vector DBに保存
- 次回セッション開始時に軽量インデックスを注入
- 必要なときだけ検索で詳細を取得(progressive disclosure)
6つのライフサイクルフック
| フック | タイミング | 役割 |
|---|---|---|
| SessionStart | セッション開始時 | 過去10セッション分のコンテキストを自動注入 |
| UserPromptSubmit | プロンプト送信時 | ユーザー入力を記録 |
| PostToolUse | ツール実行後 | 観測を抽出・AI圧縮(ここが核心) |
| Stop | 中断時 | 状態保存 |
| SessionEnd | セッション終了時 | メモリを永続化 |
| Smart Install | 初期セットアップ | 依存関係のキャッシュチェック |
設計思想:3つの「ない」
Hook駆動設計の核心は「気づかれないくらい軽いこと」です。claude-memは3つの「ない」を徹底しています。
Non-invasive(侵襲しない)
- Claude Codeの内部に踏み込まない
- 既存のワークフローを壊さない
- 導入・撤退が容易(壊れたら戻せる)
Non-blocking(止めない)
- Hookは重い処理をしない
- 観測の生成はWorkerへ非同期で投げる
- 「記憶のために作業が遅くなる」を回避
Degrade gracefully(壊れても優雅に劣化)
- Workerが落ちてもClaude Codeは動く
- 観測が欠けても致命的ではない
- 最悪、メモリ機能がない状態に戻るだけ
この思想により、「個人の便利ツール」から「日常の開発基盤として安心して使えるインフラ」へと昇華しています。
データ設計:なぜSQLite + FTS5 + Chromaなのか
claude-memの価値は「記録すること」ではなく、「必要なときに引けること」にあります。だからデータ層は、最初から検索を主役に設計されています。
SQLite:ローカル完結の強み
- 外部サービス依存なし
- バックアップが単純(ファイル1つ)
- WALモードで並行アクセス対応
- 配布時の依存を増やさない
FTS5:全文検索の威力
- 観測は「文章」なので全文検索と相性抜群
- タグやタイプだけだと「言い換え」に弱い
- 「当時の言葉」で探せることが重要
- AND / OR / NOT / フレーズ検索に対応
Chroma Vector Database(v9.0の革新)
最新版で追加されたセマンティック検索が、検索精度を劇的に向上させました。
- キーワードが完全一致しなくても関連観測を発見
- 「似た作業をした時の記録」を自動取得
- より直感的な自然言語検索が可能
FTS5(キーワードベース)+ Chroma(セマンティックベース)のハイブリッド検索——これがclaude-memの検索が「異常に賢い」理由です。
progressive disclosure:LLMの弱点を逆手に取る
LLMに全文ログを渡すと何が起きるか?
- トークンが溶ける
- 必要情報が埋もれる
- 無関係な文脈に引っ張られる
- 長期運用ほど破綻する
claude-memの「3層検索」は、この問題を構造的に解決します。
| レイヤー | 操作 | トークン消費 | 目的 |
|---|---|---|---|
| 1 | search | 〜50-100/件 | 何があるか把握 |
| 2 | timeline | 軽量 | 因果関係を把握 |
| 3 | get_observations | 〜500-1,000/件 | 必要な詳細だけ取得 |
約10倍のトークン節約を実現。これが「全部読み込んでコンテキスト溢れ」と無縁でいられる理由です。
MCPツールとしての実装
| ツール | 用途 |
|---|---|
| search | 全文検索 + タイプ/日付/プロジェクトでフィルタ |
| timeline | 特定観測の前後7件ずつを時系列取得 |
| get_observations | ID指定で完全詳細を取得(バッチ推奨) |
| __IMPORTANT | ワークフロードキュメント(常時表示) |
settings.json:運用の「背骨」を設計する
上級者が最初に詰めるべきは設定です。ここが運用品質を決めます。
主要設定項目
{
"CLAUDE_MEM_MODEL": "claude-sonnet-4-5",
"CLAUDE_MEM_WORKER_PORT": 37777,
"CLAUDE_MEM_CONTEXT_OBSERVATIONS": 50,
"CLAUDE_MEM_CONTEXT_SESSION_COUNT": 10
}
| 項目 | 説明 | チューニング指針 |
|---|---|---|
| CLAUDE_MEM_MODEL | 観測生成モデル | 品質重視→opus、速度重視→haiku |
| CLAUDE_MEM_WORKER_PORT | Web ViewerのHTTPポート | 競合時に変更 |
| CLAUDE_MEM_CONTEXT_OBSERVATIONS | 1回の注入で読み込む観測数(1-200) | 多すぎるとノイズ、少なすぎると情報不足 |
| CLAUDE_MEM_CONTEXT_SESSION_COUNT | 参照するセッション数(1-50) | 長期プロジェクトは多めに |
SKIP_TOOLS:ノイズ除去の要
観測は多すぎるとノイズになります。「残して意味があるもの」だけに絞るのが運用の要です。
デフォルトで除外されるツール:
- ListMcpResourcesTool
- SlashCommand
- Skill
- TodoWrite
- AskUserQuestion
目標は「後から探せる密度」にすること。量ではなく「検索で勝てる形」に寄せます。
運用で差がつく4つの「型」
claude-memは入れて終わりではありません。運用で差がつくタイプのツールです。
型1:決定は「結論+理由+前提」を1行で残す
これだけで、後から爆速になります。
テンプレート
結論:GD優先で画像変換する
理由:Imagickがホスティングで使えない環境がある
前提:ユーザーは共有サーバーが多い
型2:バグは「症状→再現→原因→修正→防止」をセットで
bugfix観測は後から最も価値が高い。同じ地雷を二度踏まない仕組みを自動構築できます。
テンプレート
症状:ログイン後に500エラー
再現:OAuth認証後、リダイレクト時に発生
原因:セッションIDの再生成タイミング
修正:session_regenerate_id()の呼び出し位置を変更
防止:認証フローのE2Eテスト追加
型3:調査は「結論+参照+捨てた仮説」を残す
「捨てた仮説」が残ると、同じ回り道を減らせます。
結論:WordPress 6.4以降はget_posts()の挙動が変更
参照:https://developer.wordpress.org/...
捨てた仮説:キャッシュプラグインの影響→ログから否定
型4:privateタグは「例外」ではなく「規約」に
上級者の現場では、privateタグは習慣として定着させます。
- 個人情報・契約情報・シークレット →
<private> - 顧客名・社内URL・内部構成 → 案件により
<private> - 端末外に出る可能性がある情報 → 慎重に判断
バックアップとメンテナンス戦略
バックアップの二面性
端末故障に備えてバックアップは必須。ただし、バックアップは「流出リスク」でもあることを忘れずに。
- 暗号化必須
- 保管場所のアクセス権を限定
- 保管期間を設定
肥大化対策
- skip toolsで観測密度を上げる
- 「価値が低い観測」が増えたら運用を見直す
- 観測の粒度は小さすぎても大きすぎてもNG
- 小さすぎ:断片だらけで文脈が掴めない
- 大きすぎ:検索結果が重くなる
月次監査のすすめ
月1回、以下をざっと確認するだけで「使える資産」が維持されます。
- decisionがちゃんと残ってるか
- bugfixがテンプレを満たしてるか
- discoveryに参照URLがあるか
Endless Mode(Beta):20倍の可能性と代償
ここからが本記事のクライマックスです。
claude-memには、ツール実行回数を20倍に拡張する実験的機能が存在します。その名もEndless Mode。
何を解決しようとしているのか
Claude Codeの「50回の壁」は、ツール出力がコンテキストに積み上がることで発生します。
通常モード:
ツール実行 → 出力をそのままコンテキストに保存
→ 1回あたり1,000〜10,000トークン消費
→ O(N²)の二次関数的増加
→ 約50回で20万トークン枯渇
Endless Modeは、この構造を根本から変えます。
Endless Mode:
ツール実行 → 出力をリアルタイムで圧縮
→ 約500トークンの「観測」に変換
→ 元の出力はディスクのアーカイブへ
→ O(N)の線形的増加
→ 約1,000回まで実行可能
性能指標(理論値)
| 項目 | 通常モード | Endless Mode |
|---|---|---|
| ツール実行回数 | 約50回で限界 | 約1,000回まで可能(20倍) |
| トークン削減率 | — | 約95% |
| セッションあたり節約 | — | 約2,250トークン(実測) |
⚠️ 重要:これらの数値は理論値・シミュレーションベースです。公式ドキュメントでも「efficiency claims are based on simulations, not real-world production data」と明記されています。
代償:知っておくべきリスク
- レイテンシ増加:ツール実行ごとに60〜90秒の遅延(圧縮処理コスト)
- 圧縮品質問題:重要情報が削ぎ落ちる可能性
- メモリ使用量:長時間セッションで数GB消費
- Beta版リスク:安定版には含まれていない
使い分けの戦略
| プロジェクト特性 | 推奨モード |
|---|---|
| 短時間・単発作業 | CLAUDE.md or 標準モード |
| 中規模・日常開発 | claude-mem標準モード |
| 大規模リファクタリング・長時間セッション | Endless Mode(検証後) |
長期案件の本番にいきなり適用するのは避け、まずは個人プロジェクトや検証ブランチで試してください。
「1M context時代」にメモリが必要な理由
「コンテキストが巨大なら、全部入れればいいのでは?」
この疑問に、明確に答えます。ダメです。
- 何が重要かを選別するのが難しい
- 情報が多いほど、モデルが「うっすら間違える」リスク増大
- 後から再利用したいのは「要点+理由+結論」
- 毎回全部読むのは時間もコストもかかる
claude-memは、観測(要点)として外部化し、検索で必要分だけ取り出す。これが「記憶」と「コンテキスト」の本質的な違いです。
FAQ:上級者の疑問に答える
Q. 観測が増えすぎてノイズになる
まずskip toolsを見直し。次に観測テンプレ(decision/bugfix/discovery)を整え、検索語が揃うように運用します。
Q. 「何を残すべきか」の判断基準は?
未来の自分が困るポイントを基準に。判断の理由、バグの原因と修正、調査の結論と参照。逆に、一時的な出力やログはノイズなので削ります。
Q. チーム導入の最小ルールは?
- privateタグの規約(何を残さないか)
- decision/bugfix/discoveryのテンプレ
- バックアップ・共有のポリシー
Q. 観測の品質が微妙(要約が薄い/ズレる)
- モデルをsonnet→opusに変更
- skip toolsでノイズ削減
- 「決定理由を1行で書く」運用を徹底
Q. 他のメモリ管理ツールとの違いは?
| ツール | 特徴 | claude-memとの差 |
|---|---|---|
| Memory Bank (MCP) | 手動管理、構造化ナレッジベース | 手間がかかる |
| CLAUDE.md | Claude Code標準、完全手動 | 自動化なし |
| Cline Memory Bank | Clineエディタ用 | Claude Code非対応 |
| claude-mem | 完全自動、セマンティック検索、Endless Mode | — |
チーム導入向け:運用ポリシーテンプレート
そのままコピペして使えるテンプレートです。
# claude-mem 運用ポリシー
## 目的
- セッションをまたぐ開発の"前提・判断・修正履歴"を資産化する
- 長期保守の復帰コストを下げる
- バグの再発を減らす
## 残すもの(推奨)
- decision:結論+理由+前提
- bugfix:症状/再現/原因/修正/再発防止
- discovery:結論/参照/捨てた仮説
## 残さないもの(必須)
- APIキー、個人情報、契約情報、顧客の秘匿情報
- 社内限定URL、内部IP、脆弱性情報
→ <private>...</private> を使用する
## バックアップ
- バックアップ先:________
- 暗号化:________
- アクセス権:________
- 保管期間:________
## 変更管理
- 設定変更の担当者:________
- Endless Modeは検証環境で先に評価する
まとめ:claude-memを「武器」にする
claude-memは、ただの便利ツールではありません。
- Hook駆動の非侵襲設計で、既存ワークフローを壊さない
- SQLite + FTS5 + Chromaのハイブリッド検索で、異常に賢い
- progressive disclosureで、トークンを10倍節約
- Endless Modeで、ツール実行回数を20倍に拡張(Beta)
そして何より、運用の「型」を持つことで、その効果は何倍にもなります。
decision、bugfix、discoveryのテンプレート。privateタグの規約化。月次の監査。これらを整備することで、claude-memは単なるメモリツールから「プロジェクトの知識資産を蓄積するインフラ」へと進化します。
11,000スターの熱狂には理由があります。
その真価を引き出すのは、あなたの運用次第です。
参考リンク
- 公式サイト:https://claude-mem.ai/
- GitHub(公式):https://github.com/thedotmack/claude-mem
- 公式ドキュメント:https://docs.claude-mem.ai/introduction
- note(体験・紹介):https://note.com/masa_wunder/n/n7cc0614ed7f8
- Zenn(Endless Mode解説):https://zenn.dev/tenormusica/articles/claude-mem-endless-mode-context-limit-2025
注意事項
本記事は2026年1月時点の情報に基づいています。仕様・挙動は将来変更される可能性があります。導入は自己責任で行い、重要な環境では事前にバックアップを取得してください。
APIキー・個人情報・機密情報は<private>...</private>で囲んでください。
claude-memのライセンスはAGPL-3.0です。ragtime/ディレクトリはPolyForm Noncommercial License 1.0.0で別途ライセンスされています。チーム導入・改変・配布を検討している場合は、公式のライセンス表記を必ず確認してください。



コメント