claude-mem上級編|Hook設計・運用の型・Endless Modeで開発効率を最大化する

Claude Code Claude-mem AI

claude-memを「なんとなく便利」で終わらせていませんか?

インストールして、観測が溜まって、たまに検索する——それだけでも十分便利です。でも、このツールの本当のポテンシャルは、そんなものではありません。

なぜclaude-memはGitHubで11,000スター超を獲得したのか。なぜ24時間で949スターという異常な速度で広まったのか。

その理由は、アーキテクチャの革新性運用で差がつく設計思想にあります。

この記事では、claude-memの内部構造から運用ノウハウ、そしてツール実行回数を20倍に拡張するEndless Mode(Beta)まで、上級者が知るべきすべてを解説します。

  1. この記事でわかること
  2. 想定読者
  3. 【重要】先に押さえるべき注意点
    1. ライセンス(AGPL-3.0)
    2. セキュリティ
  4. 革新の核心:「Hook駆動の外付け」アーキテクチャ
    1. 動作の流れ
    2. 6つのライフサイクルフック
  5. 設計思想:3つの「ない」
    1. Non-invasive(侵襲しない)
    2. Non-blocking(止めない)
    3. Degrade gracefully(壊れても優雅に劣化)
  6. データ設計:なぜSQLite + FTS5 + Chromaなのか
    1. SQLite:ローカル完結の強み
    2. FTS5:全文検索の威力
    3. Chroma Vector Database(v9.0の革新)
  7. progressive disclosure:LLMの弱点を逆手に取る
    1. MCPツールとしての実装
  8. settings.json:運用の「背骨」を設計する
    1. 主要設定項目
    2. SKIP_TOOLS:ノイズ除去の要
  9. 運用で差がつく4つの「型」
    1. 型1:決定は「結論+理由+前提」を1行で残す
    2. 型2:バグは「症状→再現→原因→修正→防止」をセットで
    3. 型3:調査は「結論+参照+捨てた仮説」を残す
    4. 型4:privateタグは「例外」ではなく「規約」に
  10. バックアップとメンテナンス戦略
    1. バックアップの二面性
    2. 肥大化対策
    3. 月次監査のすすめ
  11. Endless Mode(Beta):20倍の可能性と代償
    1. 何を解決しようとしているのか
    2. 性能指標(理論値)
    3. 代償:知っておくべきリスク
    4. 使い分けの戦略
  12. 「1M context時代」にメモリが必要な理由
  13. FAQ:上級者の疑問に答える
    1. Q. 観測が増えすぎてノイズになる
    2. Q. 「何を残すべきか」の判断基準は?
    3. Q. チーム導入の最小ルールは?
    4. Q. 観測の品質が微妙(要約が薄い/ズレる)
    5. Q. 他のメモリ管理ツールとの違いは?
  14. チーム導入向け:運用ポリシーテンプレート
  15. まとめ:claude-memを「武器」にする
  16. 参考リンク
  17. 注意事項

この記事でわかること

  • なぜその設計になっているのか——Hook駆動・非侵襲設計の真意
  • どこがボトルネックになりやすいのか——観測の質と検索性能
  • どう運用設計すれば資産化できるのか——プロの「型」
  • Endless Mode(Beta)をどう見極めるか——20倍の可能性とリスク

想定読者

  • Claude Codeを日常的に使っていて、メモリ運用を詰めたい人
  • 仕事で使うので、プライバシー/ログ管理/バックアップが気になる人
  • チーム導入や長期案件を見据えている人
  • 「50回の壁」を構造から突破したい人

【重要】先に押さえるべき注意点

ライセンス(AGPL-3.0)

claude-memはAGPL-3.0ライセンスです。社内利用・クライアント案件・改変・再配布の可能性がある場合、導入前に必ず確認してください。ネットワーク経由でサービス提供する場合は、ソースコード公開義務が発生します。

なお、ragtime/ディレクトリはPolyForm Noncommercial License 1.0.0で別途ライセンスされています。商用利用時は特に注意が必要です。

セキュリティ

観測ログは便利ですが、流出すれば設計や内部事情が丸見えになります。以下を整備してから本格運用してください。

  • privateタグの運用ルール
  • データ保存先(端末暗号化/アクセス制御)
  • バックアップの取り扱い
  • 共有範囲の明確化

革新の核心:「Hook駆動の外付け」アーキテクチャ

claude-memの最大の革新は、その設計思想にあります。

Claude Codeを「改造」しない。外側から「観測」して価値を足す。

Claude Codeは基本的にクローズドなバイナリです。内部を変更することは難しい。そこでclaude-memは、Claude Codeが提供するライフサイクルHookを利用します。

動作の流れ

  1. Hookでイベントを拾う(セッション開始、プロンプト送信、ツール実行後、停止、終了)
  2. イベントを「観測材料」としてキューへ(軽量・非ブロッキング)
  3. Workerが非同期で観測を生成(Claude Agent SDKで約500トークンに圧縮)
  4. SQLite + Chroma Vector DBに保存
  5. 次回セッション開始時に軽量インデックスを注入
  6. 必要なときだけ検索で詳細を取得(progressive disclosure)

6つのライフサイクルフック

フック タイミング 役割
SessionStart セッション開始時 過去10セッション分のコンテキストを自動注入
UserPromptSubmit プロンプト送信時 ユーザー入力を記録
PostToolUse ツール実行後 観測を抽出・AI圧縮(ここが核心)
Stop 中断時 状態保存
SessionEnd セッション終了時 メモリを永続化
Smart Install 初期セットアップ 依存関係のキャッシュチェック

設計思想:3つの「ない」

Hook駆動設計の核心は「気づかれないくらい軽いこと」です。claude-memは3つの「ない」を徹底しています。

Non-invasive(侵襲しない)

  • Claude Codeの内部に踏み込まない
  • 既存のワークフローを壊さない
  • 導入・撤退が容易(壊れたら戻せる)

Non-blocking(止めない)

  • Hookは重い処理をしない
  • 観測の生成はWorkerへ非同期で投げる
  • 「記憶のために作業が遅くなる」を回避

Degrade gracefully(壊れても優雅に劣化)

  • Workerが落ちてもClaude Codeは動く
  • 観測が欠けても致命的ではない
  • 最悪、メモリ機能がない状態に戻るだけ

この思想により、「個人の便利ツール」から「日常の開発基盤として安心して使えるインフラ」へと昇華しています。

データ設計:なぜSQLite + FTS5 + Chromaなのか

claude-memの価値は「記録すること」ではなく、「必要なときに引けること」にあります。だからデータ層は、最初から検索を主役に設計されています。

SQLite:ローカル完結の強み

  • 外部サービス依存なし
  • バックアップが単純(ファイル1つ)
  • WALモードで並行アクセス対応
  • 配布時の依存を増やさない

FTS5:全文検索の威力

  • 観測は「文章」なので全文検索と相性抜群
  • タグやタイプだけだと「言い換え」に弱い
  • 「当時の言葉」で探せることが重要
  • AND / OR / NOT / フレーズ検索に対応

Chroma Vector Database(v9.0の革新)

最新版で追加されたセマンティック検索が、検索精度を劇的に向上させました。

  • キーワードが完全一致しなくても関連観測を発見
  • 「似た作業をした時の記録」を自動取得
  • より直感的な自然言語検索が可能

FTS5(キーワードベース)+ Chroma(セマンティックベース)のハイブリッド検索——これがclaude-memの検索が「異常に賢い」理由です。

progressive disclosure:LLMの弱点を逆手に取る

LLMに全文ログを渡すと何が起きるか?

  • トークンが溶ける
  • 必要情報が埋もれる
  • 無関係な文脈に引っ張られる
  • 長期運用ほど破綻する

claude-memの「3層検索」は、この問題を構造的に解決します。

レイヤー 操作 トークン消費 目的
1 search 〜50-100/件 何があるか把握
2 timeline 軽量 因果関係を把握
3 get_observations 〜500-1,000/件 必要な詳細だけ取得

約10倍のトークン節約を実現。これが「全部読み込んでコンテキスト溢れ」と無縁でいられる理由です。

MCPツールとしての実装

ツール 用途
search 全文検索 + タイプ/日付/プロジェクトでフィルタ
timeline 特定観測の前後7件ずつを時系列取得
get_observations ID指定で完全詳細を取得(バッチ推奨)
__IMPORTANT ワークフロードキュメント(常時表示)

settings.json:運用の「背骨」を設計する

上級者が最初に詰めるべきは設定です。ここが運用品質を決めます。

主要設定項目

{
  "CLAUDE_MEM_MODEL": "claude-sonnet-4-5",
  "CLAUDE_MEM_WORKER_PORT": 37777,
  "CLAUDE_MEM_CONTEXT_OBSERVATIONS": 50,
  "CLAUDE_MEM_CONTEXT_SESSION_COUNT": 10
}
項目 説明 チューニング指針
CLAUDE_MEM_MODEL 観測生成モデル 品質重視→opus、速度重視→haiku
CLAUDE_MEM_WORKER_PORT Web ViewerのHTTPポート 競合時に変更
CLAUDE_MEM_CONTEXT_OBSERVATIONS 1回の注入で読み込む観測数(1-200) 多すぎるとノイズ、少なすぎると情報不足
CLAUDE_MEM_CONTEXT_SESSION_COUNT 参照するセッション数(1-50) 長期プロジェクトは多めに

SKIP_TOOLS:ノイズ除去の要

観測は多すぎるとノイズになります。「残して意味があるもの」だけに絞るのが運用の要です。

デフォルトで除外されるツール:

  • ListMcpResourcesTool
  • SlashCommand
  • Skill
  • TodoWrite
  • AskUserQuestion

目標は「後から探せる密度」にすること。量ではなく「検索で勝てる形」に寄せます。

運用で差がつく4つの「型」

claude-memは入れて終わりではありません。運用で差がつくタイプのツールです。

型1:決定は「結論+理由+前提」を1行で残す

これだけで、後から爆速になります。

テンプレート

結論:GD優先で画像変換する
理由:Imagickがホスティングで使えない環境がある
前提:ユーザーは共有サーバーが多い

型2:バグは「症状→再現→原因→修正→防止」をセットで

bugfix観測は後から最も価値が高い。同じ地雷を二度踏まない仕組みを自動構築できます。

テンプレート

症状:ログイン後に500エラー
再現:OAuth認証後、リダイレクト時に発生
原因:セッションIDの再生成タイミング
修正:session_regenerate_id()の呼び出し位置を変更
防止:認証フローのE2Eテスト追加

型3:調査は「結論+参照+捨てた仮説」を残す

「捨てた仮説」が残ると、同じ回り道を減らせます。

結論:WordPress 6.4以降はget_posts()の挙動が変更
参照:https://developer.wordpress.org/...
捨てた仮説:キャッシュプラグインの影響→ログから否定

型4:privateタグは「例外」ではなく「規約」に

上級者の現場では、privateタグは習慣として定着させます。

  • 個人情報・契約情報・シークレット → <private>
  • 顧客名・社内URL・内部構成 → 案件により<private>
  • 端末外に出る可能性がある情報 → 慎重に判断

バックアップとメンテナンス戦略

バックアップの二面性

端末故障に備えてバックアップは必須。ただし、バックアップは「流出リスク」でもあることを忘れずに。

  • 暗号化必須
  • 保管場所のアクセス権を限定
  • 保管期間を設定

肥大化対策

  • skip toolsで観測密度を上げる
  • 「価値が低い観測」が増えたら運用を見直す
  • 観測の粒度は小さすぎても大きすぎてもNG
    • 小さすぎ:断片だらけで文脈が掴めない
    • 大きすぎ:検索結果が重くなる

月次監査のすすめ

月1回、以下をざっと確認するだけで「使える資産」が維持されます。

  • decisionがちゃんと残ってるか
  • bugfixがテンプレを満たしてるか
  • discoveryに参照URLがあるか

Endless Mode(Beta):20倍の可能性と代償

ここからが本記事のクライマックスです。

claude-memには、ツール実行回数を20倍に拡張する実験的機能が存在します。その名もEndless Mode

何を解決しようとしているのか

Claude Codeの「50回の壁」は、ツール出力がコンテキストに積み上がることで発生します。

通常モード:
ツール実行 → 出力をそのままコンテキストに保存
→ 1回あたり1,000〜10,000トークン消費
→ O(N²)の二次関数的増加
→ 約50回で20万トークン枯渇

Endless Modeは、この構造を根本から変えます。

Endless Mode:
ツール実行 → 出力をリアルタイムで圧縮
→ 約500トークンの「観測」に変換
→ 元の出力はディスクのアーカイブへ
→ O(N)の線形的増加
→ 約1,000回まで実行可能

性能指標(理論値)

項目 通常モード Endless Mode
ツール実行回数 約50回で限界 約1,000回まで可能(20倍)
トークン削減率 約95%
セッションあたり節約 約2,250トークン(実測)

⚠️ 重要:これらの数値は理論値・シミュレーションベースです。公式ドキュメントでも「efficiency claims are based on simulations, not real-world production data」と明記されています。

代償:知っておくべきリスク

  • レイテンシ増加:ツール実行ごとに60〜90秒の遅延(圧縮処理コスト)
  • 圧縮品質問題:重要情報が削ぎ落ちる可能性
  • メモリ使用量:長時間セッションで数GB消費
  • Beta版リスク:安定版には含まれていない

使い分けの戦略

プロジェクト特性 推奨モード
短時間・単発作業 CLAUDE.md or 標準モード
中規模・日常開発 claude-mem標準モード
大規模リファクタリング・長時間セッション Endless Mode(検証後)

長期案件の本番にいきなり適用するのは避け、まずは個人プロジェクトや検証ブランチで試してください。

「1M context時代」にメモリが必要な理由

「コンテキストが巨大なら、全部入れればいいのでは?」

この疑問に、明確に答えます。ダメです。

  • 何が重要かを選別するのが難しい
  • 情報が多いほど、モデルが「うっすら間違える」リスク増大
  • 後から再利用したいのは「要点+理由+結論」
  • 毎回全部読むのは時間もコストもかかる

claude-memは、観測(要点)として外部化し、検索で必要分だけ取り出す。これが「記憶」と「コンテキスト」の本質的な違いです。

FAQ:上級者の疑問に答える

Q. 観測が増えすぎてノイズになる

まずskip toolsを見直し。次に観測テンプレ(decision/bugfix/discovery)を整え、検索語が揃うように運用します。

Q. 「何を残すべきか」の判断基準は?

未来の自分が困るポイントを基準に。判断の理由、バグの原因と修正、調査の結論と参照。逆に、一時的な出力やログはノイズなので削ります。

Q. チーム導入の最小ルールは?

  1. privateタグの規約(何を残さないか)
  2. decision/bugfix/discoveryのテンプレ
  3. バックアップ・共有のポリシー

Q. 観測の品質が微妙(要約が薄い/ズレる)

  • モデルをsonnet→opusに変更
  • skip toolsでノイズ削減
  • 「決定理由を1行で書く」運用を徹底

Q. 他のメモリ管理ツールとの違いは?

ツール 特徴 claude-memとの差
Memory Bank (MCP) 手動管理、構造化ナレッジベース 手間がかかる
CLAUDE.md Claude Code標準、完全手動 自動化なし
Cline Memory Bank Clineエディタ用 Claude Code非対応
claude-mem 完全自動、セマンティック検索、Endless Mode

チーム導入向け:運用ポリシーテンプレート

そのままコピペして使えるテンプレートです。

# claude-mem 運用ポリシー

## 目的
- セッションをまたぐ開発の"前提・判断・修正履歴"を資産化する
- 長期保守の復帰コストを下げる
- バグの再発を減らす

## 残すもの(推奨)
- decision:結論+理由+前提
- bugfix:症状/再現/原因/修正/再発防止
- discovery:結論/参照/捨てた仮説

## 残さないもの(必須)
- APIキー、個人情報、契約情報、顧客の秘匿情報
- 社内限定URL、内部IP、脆弱性情報
→ <private>...</private> を使用する

## バックアップ
- バックアップ先:________
- 暗号化:________
- アクセス権:________
- 保管期間:________

## 変更管理
- 設定変更の担当者:________
- Endless Modeは検証環境で先に評価する

まとめ:claude-memを「武器」にする

claude-memは、ただの便利ツールではありません。

  • Hook駆動の非侵襲設計で、既存ワークフローを壊さない
  • SQLite + FTS5 + Chromaのハイブリッド検索で、異常に賢い
  • progressive disclosureで、トークンを10倍節約
  • Endless Modeで、ツール実行回数を20倍に拡張(Beta)

そして何より、運用の「型」を持つことで、その効果は何倍にもなります

decision、bugfix、discoveryのテンプレート。privateタグの規約化。月次の監査。これらを整備することで、claude-memは単なるメモリツールから「プロジェクトの知識資産を蓄積するインフラ」へと進化します。

11,000スターの熱狂には理由があります。

その真価を引き出すのは、あなたの運用次第です。

参考リンク

注意事項

本記事は2026年1月時点の情報に基づいています。仕様・挙動は将来変更される可能性があります。導入は自己責任で行い、重要な環境では事前にバックアップを取得してください。

APIキー・個人情報・機密情報は<private>...</private>で囲んでください。

claude-memのライセンスはAGPL-3.0です。ragtime/ディレクトリはPolyForm Noncommercial License 1.0.0で別途ライセンスされています。チーム導入・改変・配布を検討している場合は、公式のライセンス表記を必ず確認してください。

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