この記事でできるようになること
・「当たり外れ」を減らし、AIの出力を安定させる
・いきなり完成品を狙わず、分解→評価→反復で精度を上げる
・Rubric(評価基準)を使って、チューニングを再現可能にする
・”差分指示”で修正スピードを上げる
・実務・制作に転用できるテンプレを手元に残す
はじめに:中級者の壁は「うまい一発」ではなく「再現性」です
AIに慣れてくると、テンプレをコピペするだけでは満足できなくなります。理由は単純で、やりたいことが複雑になり、結果の品質が求められるからです。
中級者がよくぶつかる壁は次のようなものです。
- 同じ依頼でも回答のムラが出る
- “それっぽい”けど、決め手に欠ける
- 修正が増えて、結局自分で書いた方が早い気がする
- 事実・数値・固有名詞が絡むと、怪しくなる
この段階で重要になるのは、プロンプトを「文章術」ではなく、設計と工程管理として扱うことです。
この記事では、プロンプトを次の流れで整理します。
- 分解(Decompose):作業を工程に切る
- 評価(Evaluate):Rubricで採点できる条件を作る
- 反復(Iterate):差分指示で最短で直す
この3つを手に入れると、AIの使い方が「くじ引き」から「工学」になります。
1. 中級者がハマる”伸びない理由”
1-1. 「良いプロンプト」を探し続けてしまう
中級者の多くは、最初にテンプレで成功体験を得ます。その後、「もっと良い呪文があるのでは?」という方向に行きがちです。
しかし実務で強いのは、”呪文”ではなく工程を組んだ依頼です。つまり、プロンプトを一発技にしないことが大切です。
1-2. 出力を評価できていない(直し方が毎回バラバラ)
「なんか違う」だけだと、修正も雑になります。中級者は、出力を採点できる基準(Rubric)に落とすと伸びます。
1-3. AIに判断させすぎている
複雑な依頼ほど、AIが補完する余地が増えます。補完が増えるほど、誤解が混ざる確率も上がります。中級者は「決めることは先に決める」方が勝ちやすいです。
2. 設計の基本6要素(初心者の4要素+2)
初心者の4要素(目的・文脈・条件・形式)に加えて、中級者は2つを足します。
| 要素 | 説明 |
|---|---|
| 1. 目的(Goal) | 読み終えた状態/作りたい成果物 |
| 2. 文脈(Context) | 用途・前提・読者 |
| 3. 条件(Constraints) | やること/やらないこと |
| 4. 形式(Format) | Markdown・表・箇条書き・順序 |
| 5. 評価基準(Rubric)★ | 採点できる言葉(Yes/No or 数) |
| 6. 進め方(Process)★ | 設計→実装→検査→改善 |
2-1. Rubric(評価基準)とは何か
Rubricは「採点表」です。例えば「わかりやすい記事」という曖昧な要求を、採点できる形にします。
例:ブログ記事のRubric(採点基準)
- 結論が冒頭にある(Yes/No)
- 各H2に具体例が1つ以上ある(Yes/No)
- 章末に要点が3つある(Yes/No)
- 読者が次に取れる行動が最低3つ提示されている(Yes/No)
- 断定のしすぎがなく、前提や例外が補足されている(Yes/No)
こうすると、修正が「気分」ではなく「仕様変更」になります。
2-2. Process(進め方)は”やり直し前提”にすると強い
複雑な成果物は、いきなり完成を狙うと手戻りが増えます。中級者は次の順にすると安定します。
- 設計(構成・要点・狙い)
- 実装(本文や成果物)
- 検査(Rubricで点検)
- 改善(差分指示)
3. 2ターン(設計→実装)で一気に安定する
ここからが最重要です。中級者の最強ムーブは「1ターン目で構成だけ固める」ことです。
3-1. ターン1:構成案を3つ出させる
あなたはプロの編集者です。 テーマ「〇〇」について、ブログ記事の構成案を3つ出してください。 各案に「狙い」「想定読者」「結論(1文)」「H2/H3の見出し」「注意点(落とし穴)」を添えてください。
3-2. ターン2:採用案で本文を書かせる(Rubric込み)
案2を採用します。本文を書いてください。 目的:読者が明日から使える改善策を最低3つ持ち帰る。 Rubric:各H2に具体例、章末まとめ3つ、最後にチェックリスト10項目とFAQ7問。 形式:Markdown(目次→本文→まとめ→チェックリスト→FAQ)。 トーン:丁寧。断定しすぎず、例外や前提条件を一言添える。
3-3. 2ターン方式のメリット
- 方向性のズレを早い段階で潰せる
- 直しが「章単位」ではなく「構成単位」になる
- 手戻りが劇的に減る
- “思ってたのと違う”が起きにくい
4. Rubric(評価基準)の作り方:採点できる言葉にする
Rubricは、細かいほど良いわけではありません。中級者がまず作るなら「5項目」くらいが扱いやすいです。
4-1. Rubricの作り方(3ステップ)
- 最終目的を1文で書く
- その目的に必要な要素を3〜6個に分解する
- 各要素を「Yes/No」または「数」で測れる形にする
4-2. 用途別Rubric例
説明記事用Rubric
- 結論が冒頭にある(Yes/No)
- 例が各章に1つ以上ある(数)
- 専門用語は初出で説明されている(Yes/No)
- 読者が次に取る行動が3つある(数)
- まとめが「要点3つ」になっている(Yes/No)
提案骨子用Rubric
- 課題が明確(前提も含む)
- 解決策が課題に対応している
- 効果が測れる(指標がある)
- 反論ポイントと対策がある
- 実行計画(最初の一歩)が書かれている
要約(意思決定)用Rubric
- 結論が1文で言える
- 根拠が3点で整理されている
- リスクが列挙され、対応もある
- 次のアクションが具体
- 要確認(事実確認)が分離されている
4-3. AIに自己採点させる(便利だが使いどころ注意)
長くなりがちなので「重要案件」や「仕上げ」だけに使うのがおすすめです。
出力した文章を次のRubricで自己採点してください(5点満点×5項目)。 点数と、改善案を3つ出してください。
5. 差分指示の技術:修正が速い人の共通点
中級者が伸びる最大のポイントは、「修正指示」が上手いことです。感想ではなく、差分(変更点)として伝えると、AIは一気に直しやすくなります。
5-1. 差分指示テンプレ
方向性は良いです。次の差分を反映してください。 1) (問題)〇〇が抽象的 → (対応)具体例を1つ追加 2) (問題)〇〇が長い → (対応)2文に分割し、結論を先に 3) (問題)〇〇が強い断定 → (対応)前提条件と例外を一言添える 出力形式は同じ(Markdown)でお願いします。
5-2. “良い差分指示”の条件
- どこが問題か(場所が分かる)
- どう直すか(動詞で具体的)
- 形式は変えるのか(変えないのか)
- 直したらどうなってほしいか(目的)
5-3. ズレの種類から直すテンプレ
差分指示が書けないときは、ズレを分類してしまうと楽です。
| ズレの種類 | 説明 |
|---|---|
| ①方向性 | 何を言いたいかが違う |
| ②深さ | 浅い/深すぎる |
| ③形式 | 表が欲しいのに文章、など |
| ④トーン | 強い、硬い、軽い |
| ⑤根拠 | 事実が怪しい、要確認がない |
ズレの種類:①方向性/②深さ/③形式/④トーン/⑤根拠 のうち(該当) 修正内容: - (どこが)〇〇 - (どうする)〇〇に直す 注意:形式は維持(または変更)
6. 反復プロトコル:やり直しを前提にする
中級者以降は、最初から「改善ループ」を組んだ方が速いです。
6-1. 反復の基本プロトコル(おすすめ)
- 初稿:構成と要点を揃える
- 改善1:具体例を増やす
- 改善2:冗長さを削る/文章を整える
- 改善3:チェックリスト・FAQで実行に落とす
6-2. “改善の順番”を誤ると沼る
よくある失敗は、最初から語尾や表現だけ直すことです。まずは「内容の骨格(構成・具体例・結論)」を固め、その後に文章を磨く方が速いです。
7. ケース別テンプレ(記事/要約/企画/コード/調査)
ここでは、再現性が高いテンプレを用途別にまとめます。「1回の依頼で終わらない」設計にしているのがポイントです。
7-1. 記事:構成→本文→検査の3点セット
構成
テーマ「〇〇」の記事構成案を3つ。各案に狙い・結論(1文)・注意点を付けて。
本文
採用案で本文を書いて。Rubric:各H2に例、章末まとめ3つ、最後にチェックリストとFAQ。
検査
この本文をRubricで点検し、足りない箇所だけ追記してください。
7-2. 要約:目的別に出力を分ける
次の文章を要約してください。 出力: 1) 一言結論(1文) 2) 要点(箇条書き7つ) 3) 意思決定用(結論/根拠/リスク/次のアクション) (本文)
7-3. 企画:大量生成→評価→絞り込み
テーマ「〇〇」で企画案を20個出してください。 制約:現実的、予算小さめ、差別化ポイントを必ず1つ。 出力:表(タイトル/狙い/想定読者/差別化/必要素材/リスク)。
次に評価して絞る:
上の企画案を評価してください。基準は「実現可能性」「独自性」「成果の測りやすさ」。 上位5つを選び、改善案も書いてください。
7-4. コード:原因切り分けを”最短ルート”で
次の不具合について、原因候補を優先度順に5つ挙げてください。 その後、最短で切り分ける検証手順をステップで提示してください。 最後に暫定回避策と根本解決策を分けてください。 (状況・ログ・コード)
7-5. 調査:推測で埋めさせない
不明な点は不明と書き、推測で補完する場合は「推測」と明記してください。 事実確認が必要な項目は「要確認リスト」として最後にまとめてください。 (テーマ)
8. 幻覚(それっぽい誤り)を抑える指定
中級者が実務で怖いのは「自信満々の誤り」です。対策は、プロンプトに”扱い方”を組み込むことです。
8-1. 幻覚対策フレーズ(コピペ)
確証がない内容は断定せず「要確認」と明記してください。 推測で補完する場合は「推測」と明記してください。 事実と意見を分けて書いてください。
8-2. 「ここは自信がない」を出させる
回答の中で、確度が低い箇所を3つ挙げ、なぜ確度が低いかを書いてください。
9. チートシート(1枚まとめ)
最短フレーム(中級者版:6要素)
- 目的(Goal):読み終えた状態/作りたい成果物
- 文脈(Context):用途・前提・読者
- 条件(Constraints):やること/やらないこと(3〜7個)
- 形式(Format):Markdown・表・箇条書き・順序
- 評価基準(Rubric):採点できる言葉(Yes/No or 数)
- 進め方(Process):設計→実装→検査→改善
最強の型:2ターン(設計→実装)
ターン1(設計)
構成案を3つ。各案に「狙い/結論1文/H2-H3/注意点」。
ターン2(実装)
案2で本文。Rubric:各H2に例、章末まとめ、チェックリスト、FAQ。形式はMarkdown。
差分指示テンプレ
方向性は良いです。次の差分を反映してください。 1)(問題)〇〇 →(対応)〇〇に修正 2)(問題)〇〇 →(対応)〇〇を追加 形式は同じでお願いします。
幻覚対策フレーズ
確証がない内容は断定せず「要確認」と明記してください。 推測で補完する場合は「推測」と明記してください。 事実と意見を分けて書いてください。
10. まとめ:中級者は”うまい依頼”より”改善できる仕組み”を持つ
中級者のプロンプト上達は、文章の巧さではなく、設計の再現性です。
中級者が身につけるべき4つの習慣
・分解して工程にする
・Rubricで評価可能にする
・差分指示で最短修正する
・2ターン(設計→実装)を習慣にする
これだけで、AIの出力は「当たり外れ」から「安定」へ移行します。
11. チェックリスト(中級者版)
- ☐ Goal / Context / Constraints / Format を明記した
- ☐ Rubric(評価基準)を3〜6項目で用意した
- ☐ Process(設計→実装→検査→改善)を組んだ
- ☐ 2ターン(設計→実装)で作った
- ☐ 修正は差分指示で行った
- ☐ 幻覚対策(要確認/推測明記)を入れた
- ☐ 最後にチェックリストとFAQで”実行可能”にした
12. FAQ(中級者版)
Q1. 2ターンに分けると遅くなりませんか?
手戻りが減るので、総時間は短くなることが多いです。特に長文ほど効果が出ます。
Q2. Rubricはどれくらい細かく作るべきですか?
最初は5項目程度がおすすめです。細かすぎると運用が重くなります。
Q3. 差分指示がうまく書けません
「問題→対応」をセットで書くと安定します。例:「抽象的→例を追加」「長い→2文に分割」「断定→前提条件を補足」。
Q4. AIの答えが冗長になりやすいです
形式で「1段落は3〜5行」「章末まとめ3つ」を指定すると締まります。
Q5. 調査系で誤りが混ざるのが不安です
「要確認リスト」「推測は推測」「事実と意見を分ける」をテンプレに固定してください。
Q6. 初心者と中級者の違いは何ですか?
初心者は「テンプレを使う」、中級者は「テンプレを育てる」です。Rubricと差分指示で、自分専用の型を作れるようになると中級者卒業です。
Q7. 実務でRubricを使う時間がありません
最初は「よく使う3つの用途」だけRubricを作ってください。それを使い回すうちに、自然と定着します。
次のステップ
ここまで読んだら、次は「あなたのよくやる作業」にRubricを作ってみてください。たとえば「記事」「要約」「提案」「仕様整理」のどれか1つでも、評価基準があるだけで改善が速くなります。
業務でチームとして使いたい方は、業務活用向け記事で「標準化」と「運用ルール」を学ぶと、属人化を防げます。

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